【プロフェッショナルに聞く】第3回 KPI設定に必要な視点とは

2016年02月08日

【プロフェッショナルに聞く】第3回 KPI設定に必要な視点とは

昨今、企業において膨大なデータをどう扱うかという点について、より関心が高まってきています。実際にYahoo! JAPANでは、その業務の特性により、「ビッグデータ」や「データサイエンティスト」といった言葉が世の中に浸透する前から、データ分析の部門を置き、継続的に分析を行ってきました。

ビジネスを継続的に改善するためには、KPI(Key Performance Indicator: 重要業績評価指標)を設定することが非常に重要です。このKPIをもとに、現状を正しく理解・評価し、改善へのアクションにつなげる業務を行っているのがアナリストです。

今回は、Yahoo! JAPANの広告事業において重要な役割を担っている「KPIモニタリング」について、アナリストの高橋真理に話を聞きました。

"Yahoo! JAPANのアナリストは、日々、どのような業務を行っているのですか?"

高橋:文字通り、毎日データを分析しています(笑)。具体的に言うと、調査やログデータの分析をもとに広告出稿の効果を検証したり、広告配信のアルゴリズムを改善した場合に、売り上げやユーザビリティーなどにどのような影響が出ているのかを分析したりします。

"売り上げやユーザビリティーへの影響というのは、どのように分析するのでしょうか?"

高橋:基本的には多くの企業が行っているのと同じで、KPIを設定し、それに基づいて、日々事業実績をモニタリングしながら、変化があったときに原因を特定したりしています。

"具体的にどのようなKPIを設定しているのかを教えてください。"

高橋:基本的にはCTR(Click Through Rate: 広告が表示された際にクリックされる割合)など、インターネット広告でよく使われている指標を使っています。それらをシンプルなツリー構造で把握するようにしています。

ちょっと分かりにくいかもしれないので、検索連動型広告(スポンサードサーチ)を例に取って説明しますね(図1)。多くの方がご存じのように、検索連動型広告はインターネットユーザーがYahoo! JAPANで検索を行った際、検索結果に検索したキーワードと関連する広告が表示される仕組みの広告です。

KGI(Key Goal Indicator: 重要目標達成指標)である売り上げは、検索数とRPS(Revenue per Search: 検索1回あたりの売り上げ)に分解されます。つまり、検索数とRPSを掛け合わせると売り上げとなっているわけです。検索数はインターネットユーザーの行動(=検索)を表現する指標で、RPSは検索連動型広告の配信アルゴリズムのパフォーマンスを表す指標となります。

図1

次に、RPSはCPC(Cost Per Click:クリック単価)とClick Yield(クリックイールド:1検索あたりのクリック数)に分解されます。つまり、これらを掛け合わせるとRPSになるという図式です(図2)。

図2

さらに、Click Yieldは、Coverage(カバレッジ:検索クエリに対して広告が表示される割合)とDepth(デプス:検索クエリに対して表示される広告の本数)とCTRに分解されるといったように、因数分解の構造で要因分解できるようにKPIを設計しています。こうしておくことによって、ある指標に変化があったときに、原因がどこにあるのかをさかのぼって特定しやすくなるんです。

"原因を解明するには、シンプルな構造にしておくことが重要なんですね"

高橋:そうですね。どこに変化が起こったのかが分からないような複雑なものだとモニタリングの意味がなくなってしまうと思います。

"モニタリングの際に、他に気をつけているポイントはありますか?"

高橋:「シンプルに」ということにもつながりますが「開示しなくて良い指標は見せない」という工夫が大事だと思います。各部門の担当者は、当然、自分たちの業務に対して非常に強い関心を持っているため、どうしても「あれが見たい、これが見たい」と、確認したい指標が増えがちです。ただ、重要でないデータを見てしまうと、かえって混乱してしまう場合もあります。そのため、本当に必要な指標だけにまずは限定して開示し、それだけで原因が突き止められない場合には他の指標も含めて検証していく、という切り分けが必要だと思います。

逆説的な表現になるかもしれませんが、「戦略」というのが何かを採用し、別の何かを切り捨てることを意味するように、「可視化」というのは見なくても良いものを不可視化することが重要だと思います。


"「可視化とは、見なくて良いものを不可視化すること」-名言ですね(笑)。 最後に、現在の業務の面白さはどのようなところだと思いますか?"

高橋:いろいろな面があると思いますが、インターネットユーザーと広告主をマッチングしている巨大なキーワードマーケット(取引市場)がYahoo! JAPANであるという点が、非常に興味深いと感じています。例えば、広告主の方は自社の出稿に関する指標しか見られません。他社の実績を直接知ることはできませんし、インターネットユーザーの検索行動を細かく把握もできません。一方で、私たちアナリストが見ている指標はマーケット全体の指標です。当然、個々の広告主や代理店の指標も見ますが、基本的にはそれらを総合した全体を見ることができます。

マーケット全体を見ていると、一部分で起こった変化が他に影響を与えるといったことが起こります。バタフライ効果(注1)とまではいきませんが、複雑系(注2)の世界のようにさまざまな要素が連動して影響を及ぼしあうところが、分析の難しさであり、奥深いところだと思います。すべての広告主の広告とすべてのユーザーの検索キーワードをマッチングしている市場全体を、数値を通して体感できるというのは、Yahoo! JAPANのアナリストならではのダイナミックな面白さだと思います。

注1

非常に小さなことがさまざまな要因を引き起こし、想像もできないような大きな現象を引き起こすこと。「ブラジルでの蝶の羽ばたきは、さまざまな事象と連鎖してテキサスで竜巻を引き起こすか」という思考実験に由来する。

注2

個々の要素が相互に複雑に関連しあって全体の構造を構成しているが、全体の構造は個々の要素や部分に分解することができないようなもの。


高橋 真理(タカハシ マリ)
2009年度ヤフー株式会社新卒入社。
プロモーション広告の正規代理店および広告主の営業担当を経て、現在はマーケティングソリューションカンパニーマーケティング本部の商品企画部とリサーチアナリシス部を兼任。広告商品の販売推進および効果分析に従事。趣味はテニス。


(サムネイル画像:アフロ)

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