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サービス情報 公開日:2022.07.26

クリエイティブにおける意思決定にAIを活用。IDベース基盤の新サービスも発表

データマーケティング ソリューション

ヤフー株式会社は2022年6月10日、デジタルマーケター向けの無料オンラインイベント「Yahoo! JAPAN MARKETING CONFERENCE 2022」を開催した。「DEEP FACT! データが解き明かす真実へ。」をテーマに掲げ、ヤフーのこれからのメディア戦略、ファクトドリブンで実現する最新事例などが紹介された。

※当記事は2022年7月19日に「ExchangeWire Japan(外部サイト)」にて掲載された記事をExchangeWire Japanの許諾を得て転載しております。

データを広告主の価値へと変える

マーケティングにデータを用いるのが当たり前の時代。ヤフーではデータを活用したソリューションの提供にとどまらず、数字だけでは見えない真実、"DEEP FACT"を導き出そうとしており、本カンファレンスではヤフーによる、データを広告主の価値へと変えていくためのさまざまな事例や取り組みの紹介がなされた。

「ヤフーのクリエイティブアプローチ~AIで意思決定を加速~」では、ヤフーのマーケティングソリューションズ統括本部 営業推進本部長 江中 俊輔氏が登壇し、AI(人工知能)を用いたヤフーのクリエイティブアプローチについて語った。

ヤフーのクリエイティブアプローチの現在地とは

GDPR(EU一般データ保護規則)、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)の法規制、AppleやGoogleによる3rd Party Cookieの廃止・規制など、アドテクノロジーを活用したマーケティングの世界は大きく変わろうとしている。

アプローチ手法の変化が迫られているなか、江中氏は「アドテクノロジーも大事だが、クリエイティブも大事だ」と言及。ウェブ広告をあまり表示してほしくないと考えているユーザーが大半を占めている状況をアンケートデータとともに取り上げ「メディアによってユーザー属性もコンテンツも違う以上、クリエイティブは媒体ごとに最適化すべき」と呼びかけた。

ヤフーでは、クリエイティブの最適化を目的として、2018年に、Yahoo! JAPAN に最適なクリエイティブを知り尽くすデザイン集団、「クリエイティブ企画」チームを立ち上げた。

このチームでは、広告主に向けたクリエイティブコンサルや制作支援、そして広告クリエイティブの研究開発などを行っている。特に広告支援においては、年間170件以上の制作支援、20社以上のコンサルティングを実施している。

しかし、江中氏はクリエイティブ企画の課題として「人力で制作支援・コンサルができる社数には限界があり、制作プロセスの前段階である意思決定プロセスの支援も足りていない。さらに、研究開発においても、本当は分析がしたくても手が回っていないテーマがまだまだある」と話す。

"AIテックカンパニー"としてAIをクリエイティブに活用

これらのような課題を解決するために着目したのが"AI"である。従来、Yahoo! JAPANでは、広告領域(配信ロジック、審査など)においてはAIを活用してきたが、クリエイティブの分野においても本格的なAI活用を推し進めていくという。

ヤフーにおけるAI活用の強みは下記の3点である。

① データの量と質
Yahoo! JAPANは月間ページビュー数約840億(スマートフォン630億、パソコン210億。)※1を誇り、閲覧・検索・購買・決済などの多様なビッグデータを保有している。

② 優れたコンピューティングリソース
ヤフーは膨大なデータを生かすことのできる、優秀なスーパーコンピューター「kukai(空海)」を有する。kukaiはディープランニング(機械が自動的に大量のデータから特徴を抽出すること)にも強く、スパコンの省エネ性能ランキング「GREEN500」では世界2位を獲得している。

③ AI人材
ヤフーでは親会社であるZホールディングス株式会社とLINE株式会社との経営統合の際に、日本・アジアから世界をリードする「AIテックカンパニー」になることを宣言。グループ社員8,000人の再教育をおこない、日々の業務でAIを活用できるよう推進した。また、AIコンペティションプラットフォーム「Kaggle」に則した社内制度も整えている。

江中氏は「これら3つをすべてそろえて、かつ、広告クリエイティブに生かしているのはヤフーだけではないか」としたうえで、広告クリエイティブでのAI活用は3つのフェーズで推進していくと話す。

① クリエイティブインサイトのTIPS化では、一つ一つのテーマに基づく解析を進めるとともに、それらをコンサル/制作支援にも応用していく。その手始めに、画像解析によって得られた示唆を業種別にまとめたクリエイティブガイド集を、Yahoo!マーケティングソリューションのホームページ上にて公開した。

② クリエイティブインサイトのモデル化では、AIを活用し、広告効果の成果を予測するエンジンの開発に取り組んでいく。また、開発したエンジンは広告管理画面をはじめ多岐にわたって活用をしていくことを予定している。

③ ブラックボックスの解明では、広告主の意思決定の支援をしてくれる、説明可能なAI(XAI)の研究を進めていく。

AI解析を元にしたバナー制作によりKPIが大幅に改善

江中氏は業種別クリエイティブガイドの活用事例として、通信販売事業を行う株式会社アイムの事例を紹介。従来のクリエイティブ(バナー)を3種類、AI解析を元に作った新たなクリエイティブの3種類、計6種類を同時に配信し、成果を比較したところ、5つのKPIのうち4つがAI解析を元に作ったクリエイティブの方が優れていることがわかった。

江中氏は「ヤフーにおける広告クリエイティブのAI活用は始まったばかりである」としたうえで、これからのクリエイティブ支援の在り方について次のように語った。

「従来のクリエイティブ企画による組織での直接的な支援だけではなく、AIによる効率的かつ高精度に支援するかに着目して取り組んでいきたい。われわれが目指すのは、"健全なクリエイティブ意思決定ができる世界"。クリエイティブはユーザーの心を動かし、ユーザーの行動を促す最も重要な要素の一つだと思っている。例えば、クリエイティブの専門知識がない人も正しい意思決定ができるよう、AIで支援していきたい。ぜひ、ご期待いただきたい」(江中氏)

Marketing Chain構想のもと、ヤフーが提供する新サービスとは

「ヤフーが目指すデータ利活用の未来 新サービス発表とMarketing Chain構想」では前半、マーケティングソリューションズ統括本部データマーケティング本部長の鍵山 仁氏が登壇した。

鍵山氏は冒頭、データを利活用しマーケティング課題を解決していくためには「ヤフーが保有するデータ、お客様が保有するデータ、そしてZホールディングスが保有するデータをチェーン(鎖)のようにつなぐ必要がある」としながら、「大事な個人情報はしっかりとロックをする必要があり、この課題とも向き合わなければならない」と指摘。これらを総称したヤフーの考えが、"Marketing Chain構想"だと述べた。

そして、サードパーティークッキーを使ったマーケティングを脱却し、ファーストパーティデータを使ったマーケティングへの架け橋となるために、ヤフーではグループ全体で取り組む新プロジェクトを始動した。そして、ファーストパーティデータを管理するCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を提供するトレジャーデータと戦略的業務提携を結んだ。

ヤフーとトレジャーデータでは、複数の端末・ブラウザを使い分けるユーザーに対しても、広告を正しく届けるために、クッキーではなく、IDベース基盤のソリューションを採用。また、IDベース基盤には顧客自身が保有しているデータを使い、顧客データを元としたマーケティングプランの立ち上げと実行をしていくとともに、プライバシー保護にも配慮し、今までのマーケティングの考え方を変えていく。

このヤフーとトレジャーデータによるIDベース基盤の新サービス「Yahoo! Data Xross」は2023年春頃のリリースを予定している。

「リリースがまだまだ先だと思うお客様もいると思うが、本サービスの利用にはCDPを用意していただく必要がある。3ヵ月もしくは半年ほどかけて、しっかりと計測に必要なデータを集め、計測環境を整えていただいたタイミングで、本サービスを皆さんにお届けしたいと考えている」(鍵山氏)

また、本プロジェクトはヤフー・LINEにおける、相互のデータ連携も視野に入れて立ち上げられたものとなっている。将来的にはトレジャーデータ(CDP)を導入することにより、ヤフーだけでなく、LINEの効果計測についても、顧客自身のデータを用いたうえで、顧客自身でマーケティングが行えるようにすることも構想されている。

鍵山氏は「BYOD(自分のデバイスを持ち込む)という言葉があるが、本ソリューションで持ち込んでいただくのはデバイス(Device)ではなく、お客様のデータ(Data)となる」と踏まえたうえで、「データを持ってきていただくことで、お客様自身で広告の計測から戦略の立案まで導き出すことが可能なプラットフォームになる。また、媒体社(ヤフー)発信で都合の良い情報だけをお客様にわたすのではなく、お客様にとって必要なデータを必要な時に使える環境を作り出すことに意味があるのではないか」とYahoo! Data Xrossの持つ可能性に対しての考えを示した。


※1 ヤフー株式会社自社調査 2021年7月~12月の月平均(タブレット、従来型携帯電話除く)
※当記事は2022年7月19日に「ExchangeWire Japan」にて掲載された記事をExchangeWire Japanの許諾を得て転載しております。

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